俺のことなら俺に訊け、俺通信です。 愛です。2001年から書き続け、2014年5月にサーバーを変更しました。 それ以前のテキストはこちら→http://s.maho.jp/homepage/6c55eadec2d1b3bf/

その場で考えたお話と着地点

オポジット大好き俺通信です。雪のように純粋で繊細、透明感を放つ言葉。この場合はそれに限りません。

 

ミオリは戸惑っていた。ミオリを優しく見つめる男性の身体はぼろぼろだ。優しいこの人が死んでしまったら、私は天涯孤独になってしまう。暗い演歌みたい。運命ってやつはいつだって死神が枕元に座るのを阻止する医者の末路。それでもミオリは死亡宣告を受け入れた。「普通が一番難しい」ということを実感しながら。

 

「ミオリ、すまない」主人の眼窩は落窪んで、もはや何も見ていないように見えました。私はそんな主人を自宅で看取り、茶の間の小さな座布団に腰掛け、アルコールで胃を満たして心の隙間を埋めるのです。区役所に行くため、ミオリは外に出ます。手の震えをとめて。どうもすみませんという顔をして、優先席にゆっくりと腰掛けます。すると、反対側の優先席に座っている人と目があいました。素顔であろうに妙につやつやした顔で、ふわふわした綺麗なニットの下のお腹は確かに膨れていましたので、ミオリはその人が幸せなタイプの人なんだと悟ると同時に、己のダメなオーラがその人に伝染しないようにできるだけ小さくなり、ビールで安定剤を流し込みました。

「いけないものを見てしまった気がする」

ミオリは夜になってもなぜかその人のことが頭から離れませんでした。自分だって順風満帆な人生だったわけではないが、嬉しいことだって楽しいことだって人並みに味わってきたはずだ。起こりうることはなんだって受け入れてきたから、お酒に逃げたってなんだって生きてきたけど、万が一自分がああなっていたら…と思うと、矢庭に悲しくなってしまって、安定剤のせいなんかもあいまってミオリは泣き崩れてしまった。遺影の主人が微笑んでいる。なんでもない、とだけ呟き、眠りについた。「普通が一番難しい」ということを実感しながら。