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俺のことなら俺に訊け、俺通信です。 愛です。2001年から書き続け、2014年5月にサーバーを変更しました。 それ以前のテキストはこちら→http://s.maho.jp/homepage/6c55eadec2d1b3bf/

その場で考えたお話と結論の差

音源よりジャケットのほうが先にできたってさ俺通信です。本日の俺通信は創作でございます。いつだって創作なんだけれども。

 

ミサキは戸惑っていた。ミサキを優しく見つめる男性の苗字は「御崎」だ。この人と結婚したら私は「ミサキ・ミサキ」になってしまう。電気グルーヴの「ジュンコ・ジュンコ」みたい。運命ってやつはいつだって死者の書片手に待っているの。それでもミサキはプロポーズを受けた。「普通が一番難しい」ということを実感しながら。

 

「ミサキ、行ってくるよ」主人は毎朝定時に出社いたします。私はそんな御崎さんを玄関先で見送り、リビングの大きな白いソファに腰掛け、臍越しに御崎さんとの愛の結晶を撫でるのです。検診のため、ミサキは外に出ます。平たい靴をはいて。どうもありがとうございますという顔をして、優先席にゆっくりと腰掛けます。すると、反対側の優先席に座っている人と目があいました。白髪頭で目深にニット帽をかぶり、マスクをしたその人は缶ビールを片手に、ずっと何かこそこそとしていました。妙に厚着で、寝間着のような服装なので、ミサキは最初その人は中年の男性だと思っていましたが、ミサキと目があったその目は確かにミサキと同じような年齢の女性だとわかりました。

「いけないものを見てしまった気がする」

ミサキは夜になってもなぜかその人のことが頭から離れませんでした。自分だって順風満帆な人生だったわけではない。御崎さんの苗字に戸惑っていつまでも自分が独身のままであったら…万が一にも自分がそうなっていたら…と思うと、矢庭におそろしくなってしまって、ホルモンのせいなんかもあいまってミサキは泣き出してしまった。御崎が不思議そうな顔で問いかける。なんでもない、とだけ返事をし、眠りについた。「普通が一番難しい」ということを実感しながら。